カナディアンロッキーの旅(その1)

カナディアンロッキーの旅(その1)

1.カナディアンロッキーの山歩きの旅の特徴

私達夫婦は,最近の10年は専らヨーロッパアルプス,なかでもシャモニーを起点にしたアルプスの山歩き・山登りが中心です。でもその前の約10年間は,カナディアンロッキーでの山歩きの旅が中心でした。それ以外にも,この間世界各地の山々を歩いています。今回は,その中でカナディアンロッキーでの山歩きの旅の話を紹介しましょう。

私達夫婦は,専ら海外での山歩き・山登りが中心で,日本の山で登っためぼしい山はせいぜい大山や六甲山などの西日本の山が中心でした。今後はもう少し日本の山も歩こうと思います。

そもそも私達が海外旅行に行くようになったのは,私が10年程勤めた事務所を退所して吹田市江坂の地に自分の事務所を持ち,誰に気兼ねすることもなく自由に海外にも行けるようになってからです。丁度その頃,西名阪超低周波の公害訴訟が和解で終了したところで,弁護団員とその家族でフィジー旅行をしたのが最初です。以後毎年のように外国へ行くようになりました。ある時スイスのツェルマットで泊まり,朝一番の登山電車で終点のゴルナグラードまで行って,そこからマッターホーンの麓を歩いたのがきっかけで,私達は山歩きに目ざめました。それからと言うものは,山歩きのできる海外の目ぼしい場所を探して出かけるようになりました。その1つにカナディアンロッキーがあったのです。

私達が経験した山歩きの中では,ヨーロッパアルプスとカナディアンロッキーが双璧でした。山々の美しさではヨーロッパアルプスが最高で,その美しさは圧倒的です。それに対し自然の雄大さではカナディアンロッキーが群を抜いています。例えて言えば,富士山が何百個も連なっている様な感覚です。それ位雄大な山脈がロッキー山脈です。ですから旅行のスタイルもヨーロッパアルプスでは1箇所の街(例えばシャモニーやツェルマット)に滞在してアルプスの山々を歩くのに対し,カナディアンロッキーでは,車で移動しながら各地を探索して歩くのが適していたのです。そこで私達のそんな広大なカナディアンロッキーの旅を御紹介しましょう。

 

2.カナディアンロッキーの旅の仕方

まず最初に,カナディアンロッキーとはどの辺りをさすのかを簡単に説明します。

ロッキー山脈は北米大陸のメキシコ,アメリカ,カナダの西側を南北に縦断する山脈で,そのうちの北に位置するカナダ国内の約1450㎞位をさすと言われています。これは日本の本州の長さに匹敵するものです。この広大なカナディアンロッキーを旅する際,私達が参考にしたのは,「カナディアンロッキーハイキング案内」(益田幸郎・益田晴子著・山と渓谷社出版)という本です。ここには多くのハイキングコースが載っており,少し古くなりましたが現在でも十分利用できるものと思います。

さて,私達は初期の海外旅行を除いて,原則として,既存の旅行会社のツアーには参加せず,自分達で飛行機と宿を予約して旅行をすることにしていました。それは旅行会社のツアーを利用するとかなり割高となることを知っていたからです。例えば当時,レイクルイーズの有名な最高級ホテルシャトーレイクルイーズでの宿泊費が現地で予約したら二人で1泊209ドルで済んだのが,旅行会社のツアーでは同じホテルが1人で2倍以上の約5万円の費用がかかっていることを知りました。ですから実際には,かかった費用はトータルで半額とはいいませんが3分の2位で十分同じところを旅することができたのです。

それではもう少し具体的に旅行のエッセンスをお話します。

(1)まず,移動手段からお話します

関西空港からバンクーバーを経由してカルガリーまで飛行機で行きます。飛行時間はバンクーバーまで8時間半,さらにカルガリーまでは約1時間と少しかかります。そして,着いたカルガリーの空港でレンタカーを借りました。(勿論予め日本で予約をしておきます。)カナダのレンタカー会社(ハーツかエイビスです)には,コンパクトカー(1500~2000ccクラス)に日本車が置いてあり,できる限りこれを借りるようにしました。それは日本車を借りていて大変助かったことがあるからです。カナナキス地方の山奥で車がパンクをしてしまった時,乗っていたのがトヨタ車だったため,日本でタイヤ交換の経験があり,タイヤの取り替えに苦労せず無事予定通りに目的地に着くことができました。(もし外国車だったら取扱い説明書を読むことからしなければならず,大変です。)広大なカナディアンロッキーは,車で各地を移動しないと公共交通機関が少ないので大変不便な旅となりかねません。私はカルガリーで車を借りて,バンフ・レイクルイーズ・ジャスパーを経てエドモントンの空港まで約800㎞位移動して車を返却することが多くありました。それ以外にもバンクーバーの空港で車を借りて,トランスカナダハイウェイ1号線を1000㎞以上移動してカナディアンロッキーに入り,そして帰りは同じ道をバンクーバーまで戻ったこともあります。このトランスカナダハイウェイ1号線は,バンクーバーからカナディアンロッキーを横断しており,カナダの西と東を結ぶ主要道路となっています。この道路でキャンピングカーをつないで走る車を多く見かけました。カナディアンロッキー内にはいたるところにキャンピングカーを止めるエリアがあり,カナダ人はキャンピングカーで旅行を楽しむ人が多いようです。

(2)次に宿をどのように決めたのかお話をします

カナディアンロッキー内での中心的観光地(バンフ,レイクルイーズ,ジャスパー)では,夏のシーズンは観光客が多いため宿は事前の予約が必要となります。でもそれ以外の場所をレンタカーで移動する場合にはあまり心配はいりませんでした。それはトランスカナダハイウェイ沿いにはモーテルが結構多く有り,“vacancy”の表示があれば比較的安く(80ドル位)泊まれたからです。私達は初日にカルガリー郊外のモーテルで泊まったり,思いきってバンフの手前20㎞のキャンモアまで行きそこで宿を探して泊まりました。必要に応じて泊まった宿から次の宿泊予定地の宿を予約すれば,ほとんどのところで泊まれました。但し,一度大失敗をしたことがあります。レイクルイーズからジャスパーへ向かっている最中,宿を見つけて泊まろうとしましたがタッチの差でその宿をとりそこねてしまい,結局ジャスパーを過ぎて100㎞以上の先の小さな町まで宿を求めていくはめになってしまったのです。この時はうす汚い宿で一夜をあかし,翌日ジャスパーまで戻りました。

この時の教訓として,観光地の周辺では昼間の3時位までに泊まる宿を決めないと空いている宿がなくなってしまうこともあるので,余裕をもって早めに宿を決める必要があるということです。(特にジャスパー周辺では要注意です。)

ところで,カナディアンロッキーには,数多くのナショナルパークがあり,そこには必ず「Info.」の表示のある観光案内所があります。そこで国立公園内の山歩きの案内地図をもらったりする外,宿泊場所の情報を載せてあるアコモデーションガイドの冊子がありますので,それをもらって次の宿を物色することが多かったと思います。でも車で移動する場合,基本的には観光地から少し離れたところに宿をとる覚悟をしておけば,予約がない場合でもあまり心配することはありませんでした。このアコモデーションガイドの冊子は翌年に,宿を予約する時にも大変役に立ちました。

(3)最後に買い物(食べ物)の話をしておきましょう

私達は海外旅行をする際,原則として自炊をすることにしていました。日本から旅行用の電気ポット(鍋)を必ず持参し,宿でお湯をわかしインスタントラーメンを作ったり,味噌汁を作ります(但し,国によって三つ股コンセントを予め用意しておく必要がありますので気を付けて下さい)。カルガリー,バンフ,レイクルイーズ,ジャスパーには,日本食品を備えてあるスーパーがあり,ここで果物,インスタントラーメンやパン,ハム,サラダ等を買い,山歩き用の昼食を準備したのです。ですから,カルガリーでレンタカーを借りたら,すぐ市内でスーパーを探し,以後の食料を調達することにしていました。そして移動する度に次の宿を確保すると同時に食料を買い足して旅行を続けたのです。レンタカーの場合,このように臨機応変に対応できるから都合が良かったのです。

結局宿に泊まっても私達は買い込んだ食料で自炊をしましたから費用はかなり安くおさえることができました。おそらく外食の半分以下でしょう。カナディアンロッキーで高級ホテルに泊まり,豪華な食事をすることが目的ではありませんでしたから,これで私達は十分満足できたのです。それでも,時々日本食が恋しくなりましたが,ジャスパーで日本食を出してくれる店や食べ物店を見つけましたので,これで少し安心しました。

ここで,買い物の件をお話しましょう。中心的観光地には,みやげ物店や山の用品をそろえた店が多くあります。その中で妻の京子は,カルガリーでマウンテンコープを見つけ,そこの会員となり,必要に応じ山用品を調達しました。日本で買うより安くて機能的なものが多くあったからです。そのため京子の山用品の大半は外国で購入したもので占められています。しかしその場合カードで買い物をするため,どうしても高い物を購入してしまいがちです。ところが,同じ物が日本の店ではさらに高額になっており,驚くことがよくありました。山用品などは現地で調達する方が素敵なものが多いようです。

以上述べたことを念頭に,カナディアンロッキーの旅の具体的内容に踏み込んでお話したいと思います。但し,ここで述べたことに頭を使うのは大変だと思ったら,旅行会社のツアーに申し込めば,移動手段,宿,食事などの心配はしなくとも良いでしょう。でもその分確実に割高となることは間違いありませんが・・・。最近は現地での日本人向けの山歩きのツアーもあるようです。これをうまく利用すれば,比較的気軽に山歩きが楽しめるのかもしれません。